Keishi Ito Homepage 〜目をひらく 耳をすます つぶやく〜 

2021こどもコーラス・オンラインフェスティバル レポート

会場と各地をオンラインで結ぶ形で開催された「2021こどもコーラス・フェスティバルin浜松」は感動的な大会になりました。まずは周到な準備をしてくださった事務局や関係者各位に深く感謝申し上げます。もちろん子どもたちの歌声を聞くだけで胸がいっぱいになりましたし、それぞれに工夫された動画には今までにない新鮮な楽しさを感じました。最後に演奏されたオンライン「讃歌・未来へ」では、心の底から「歌って素晴らしい」「子どもたちが歌っている姿こそが平和の象徴だ」「生きていくことに歌や音楽は不可欠だ」という思いが溢れてきたのでした。加えて、冷静に振り返ってみると、そのようなエモーショナルなことだけではなく、今回のオンライン開催が我々に示してくれたこと、教えてくれたことは少なくなかったようにも思います。
例えば、この度のコロナによる分断はある意味で長らく日本社会の中で起こっていた東京一極集中や中央集権的な考え方に対して、「別のあり方の可能性」への模索を促しているようにも思うのです。
私たちは、子ども時代は地域で暮らし、高校、大学、社会人になるに従って他の地域や都会に移動する人が多くなるわけですが、そのことを考えると大人よりも圧倒的に「子ども」が「地域社会」を象徴する存在であることが分かります。また「歌」とは「民謡」を例に挙げるまでもなく、必ずその地域や地方の歴史や文化に根差すものでもありますから、「子ども歌、子どものコーラス」というものの中には「地域、地方」というキーワードが生きてくる可能性があるという訳です。
今回も、リアル開催一辺倒だったら安全面だけでなく費用的にも参加するのは厳しかったであろう地域からのオンライン参加がありました。この方式でいくと、ローカルな活動や身の丈にあった地域活動にもスポットを当てることが出来るようにも思います。つまり「収益性のこと等を考えて必ず一つの大きな会場に集めて大会を開かねばならないという方式」では掬いきれない各地域の個性あふれる活動にスポットが当てられる可能性があるということです。
次回のオンライン、…例えば京都からはお寺の境内で歌った動画、北海道からは大自然の中で歌った動画、海辺の町では水平線に向かって歌う子どもたち、教会の礼拝堂の中、商店街から、もちろん学校の教室でも良いのですが、様々な地域や生活環境の中で、自分たち特有の活動を伝えるものが見られるのかもしれません。また逆にこの方式だと一気に海外からのオンライン参加でグローバルへの道を開くことにもなり、国際交流の促進にも繋がります。
もちろん対面が良いには違いないのですが、コロナ禍における今回のフェスティバルが教えてくれたものとは、ある意味、今後の我々合唱連盟自体の合唱の諸活動への「視座」の持ち方のようなものであったのかもしれないと思います。

2021年『ハーモニー 夏号』より
Copyright(C) Keishi.Ito All rights reserved