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なにわコラリアーズが体験した世界合唱シンポジウム

創設20年を迎えた「なにわコラリアーズ」ですが、これまでシンガポールでの アジア・パシフィック合唱祭、カナダでのバンクーバー音楽祭、台湾での台北 メールクワイヤーとのコンサート、と国際的な場面での演奏機会を得てきております。 しかし、中でも2005年に京都で開催された世界合唱シンポジウムに国内招待団体と して参加し、その素晴らしさを体感して以来、再度世界合唱シンポジウムに参加する ことは念願でもありました。
今回は通常の開催時期よりも少し遅かった(お盆に近い時期)のと、隣国開催 であったことから(つまり忙しい社会人男性ばかりなので)、ようやく参加に舵を切り、 難関審査を運よく突破して演奏することが叶いました。そして、やはり大きな貴重な体験 を得ることができました。それは当たり前ながら「世界は広く音楽は深い。にも かかわらず音楽に込めた情感はどんな人をも取り結ぶ」ということでしょうか。

我々は、日本から来た団体としての一つの方向性を持って下記のような曲を 選曲しましたので、紹介いたします。
■キリスト教音楽の受容と自国文化・民族性との融 合による「祈り」
「どちりなキリシタン」より(千原英喜)
「Pange Lingua」(松下耕)
■仏教的音楽(声明)の合唱表現の紹介
「真言」(間宮芳生)
■多様性ある日本のフォークロアの現代作曲家によ るアレンジの紹介
 「だんじゅかりゆし」(瑞慶覧尚子)
 「刈干切唄」(池辺晋一郎)「津軽じょんがら 節」(松下耕)
■日本の舞台芸術(歌舞伎・浄瑠璃)、祭儀付随音楽 等(囃子等)の合唱的表現の紹介
 「ラプソディーインチカマツ」「マニフィカー ト」(千原英喜)

ヨーロッパの音楽関係者からは「系統だった選曲が非常に興味深かった」という評価を いただき、地元韓国の合唱指揮者からも「自国の文化と結びつけた合唱曲としてこの ような豊かなバリエーションがあることが非常に素晴らしい」という声をかけてもらい ました。我々の演奏ということ以上に、長い歴史を持たないながらも豊かな展開を 見せている日本の合唱曲(界)に対する評価や関心をいただいたのだとも思います。
また、特にこのシンポジウムのために委嘱した松下耕先生の新曲「「Pange Lingua」 (手拍子に拍子木、太鼓)、同じくこれに合わせて男声バージョンを作ってもらった 千原英喜先生の「ラプソディー・イン・チカマツ(貮の段)は大きな驚きとともに迎えられました。

メイン会場での段取りやスケジュールが分からず心配になることもありましたが、全力で 準備いただいたボランティアのスタッフ、アテンドや裏方のすべての方々に感謝せずには いられません。かつてジョイントした台北メールクワイヤーのメンバーや、京都の シンポジウムでの我々の演奏を熱狂的に気に入ってくれた元シャンティクリアのメンバー との再会等、合唱を通してのワールドワイドな人との繋がりも感じられた楽しい4日間で もありました。

なお、今回の委嘱曲は、2015年5月9日の第21回演奏会(大阪ザ・シンフォニーホール)で 国内初演いたします。

2014年『ハーモニー 秋号』より
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