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軽井沢の空 〜第2回軽井沢合唱フェスティバルに参加して〜
ときに視線について考える・・・。澄み渡った空気の中をどこまでも伸びていく視線について。
憧れをもって空や樹を見上げる視線について。穏やかに子どもや草花を見下ろす視線につい
て・・・。うたには視線が伴い、視線には情感が伴い、瞳には表情が浮かび上がる。そして、
それらの視線と視線とが緩やかに交錯するとき、そこに生じるのはきっと微笑みなのだ・・・。
**** ・<ワークショップの開催(発声、指揮法、伴奏、合唱、海外の合唱事情の紹介)>
また、喧騒から離れたバカンスの空気の中で、夏という季節の持つ高揚感のようなものがそ
れらの特徴を強烈にバックアップしているようにも思う。
・・・ことごとく合唱とは「関係性」というものに依拠し、それを強く意識させる文化芸術だと
感じる。一人では合唱は出来ない。他パートとの関係性の中でアンサンブルが生じ、アンサン
ブルにおいては、<会話する><同意する><息を合わせる>というような関係性を中心とし
たアプローチが重要となる。しかしながら・・・、にもかかわらず、どうだろう?例えば合唱コン
クールのような場面では、我々は全員が「同じような視線」を持ちすぎていないだろうか?合
唱祭のような場面でも我々は多様な「視線を交し合っている」だろうか?結果の妄信、自分の
団への固執、中央からの発信待ち・・・、他団の演奏やアプローチに心からの拍手を送ることもな
く、学ぶ機会も刺激を受ける機会も、会話を交わして新しい仲間を作る機会も逃してしまって
いるようなことはないだろうか? ・・・視線の交わる場として象徴的な「五角形」のホールも、見上げると全てを穏やかに見下ろし てくれる星空も、突然の轟きに驚いて目を合わすことになる雷雨も、視線をなごませる木々や 池の鴨たちも、新しい文化の醸成を見守るバックグラウンドに違いない。このフェスティバル の先には、「個性」や「多様性」や「双方向性」という21世紀的なキーワードに満ちた合唱の 本来的な道筋を感じる。そして10年後には、ここで発信された様々なメッセージが各地に拡が り、合唱界全体の新たな隆盛に繋がっていることを夢見るのである。 P.s 交流会の終わったあと、かつて北海道で出会い、ほのかな交流のあったウィスティリ アのメンバーが私を呼び出し私のためにうたを歌ってくれた。少し前に父を亡くしていた私の ことを知っていて、「励ましの歌」を歌ってくれたのであった。大きな歌、小さな歌・・・、それ に伴い様々な視線が行き交ったフェスティバルの最後に小さな花束のような歌のプレゼントが 嬉しかった。軽井沢合唱フェスティバルは、「必ずどこかで恩返したい」という気持ちが「微 笑み」とともにそこかしこで溢れた素敵なフェスティバルに成長し始めているのである。 2006年『合唱表現18号』より
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